2018年10月18日木曜日

吸込み配管の閉塞

1.概要
現象:吸込み配管が閉塞
測定データ:吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=正常

吸込み配管が閉塞すると、吐出し量が減少するだけでなく、振動や異音、メカニカルシールの破損など、様々な異常が発生する。そのため、吐出し配管の閉塞よりも深刻な問題となる場合が多く、早急な発見と対策が要求される。

2.性能の考察
吸込み配管が閉塞すると、吸込み配管の閉塞部分から羽根車の入口の間の圧力が低下する。例えば、マクドナルドでシェイクをストロー吸っていて、ストロー入口が詰まるとストロー内の圧力が低下して舌や唇が吸い付かれることがあるが、それと同じ現象だ。

吸込み配管の閉塞が酷くなる程に羽根車の入口の圧力は低下してゆき、ついにはキャビテーション現象が発生する。キャビテーションによって発生した気泡が、流れる液体内に含まれることで、ポンプを通過する液体の占める割合が低下する。すなわち、それが液体の流量(=吐出し量)の低下である。

図1.性能曲線
気泡を含めた流体(=気体+液体)の吐出し量は、正常な性能曲線とほぼ同じである。しかし、気泡分を差し引いて液体だけにすると、図1に記すように性能曲線は吐出し量が多いほど揚程が低下し、急な下がりこう配な曲線となる。

抵抗曲線はあまり変化しないので、運転点がAからBへ移り、全揚程はH1からH2へと小さくなり、その結果、吐出し圧力が低くなる。また、吐出し量はQ1からQ2へと減少する。

3.その他の測定データ
吸込み配管が閉塞した場合の、その他の測定データは下記となる。

・吸込み圧力:大きく低下・・・【重要】
・電流値:小
・振動値:大 ・・・回転周波数とは無関係な振動
・異音:やや大 ・・・羽根車入口付近にて発生

4.発生原因(例)
・吸込み配管の内壁にスケールが付着
・吸込み配管の内部に異物が混入
・吸込みストレーナのメッシュ部が目詰まり
・吸込み配管のバルブが全開ではない(閉止、半開状態)
・吸込み配管の配管径が小さい(設計の誤り)・・・流速は1~3m/sが適正
・吸込み配管が長すぎる(設計の誤り)
・吸込み側タンクの水位が低い(ポンプ自吸能力の限界を超えている)
・吸込み配管のヘッダー管を共有している他ポンプと並列運転

5.類似の現象との区別
吸込み側で空気が混入」は、吸込み配管の閉塞と似た測定データで、吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=変化無し となる。違いは吸込み圧力である。吸込み配管の閉塞が明らかに吸込み圧力が低下するのに対し、「吸込み側で空気が混入」は吸込み圧力が大気圧に近づく。
表1. 吸込み圧力の違い

羽根車内の流路が閉塞」は、吸込み配管の閉塞と似た測定データで、吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=変化無し となる。違いは吸込み圧力である。
また、いづれも振動が発生するが、振動原因が異なる。振動の周波数解析でいづれか確認しよう。
表2. 吸込み圧力の違い
6.アドバイス
①吸込み側に圧力計が設けられている場合は少ないが、吸込み圧力が負圧であれば、吸込み配管が閉塞していると、ほぼ断定できる。
筆者は現場調査を実施する際には、常に連成計とその小配管を持参している。ポンプ吸込みノズルの周辺にネジ+プラグがあると、小躍りしたくなるほど嬉しい。

②羽根車入口付近の外側を聴診器等を使用して、音を聞いてみる。「サー」や「ザー」という音が聞こえたら、キャビテーションによる気泡の音だ。
その音を聞きながら、少しづつ吸込みバルブを絞っていってみよう。絞るにつれて、その音が徐々に激しくなってゆけば、それは間違いなくキャビテーションによる異音である。

7. 修正履歴
2018-10-20:図1の誤記訂正
2018-10-29:類似の現象の項目を変更
以上

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