2018年11月18日日曜日

羽根車の羽根一枚を欠損

1.概要
図1.羽根一枚を欠損
羽根車の損傷の仕方には色々と種類がある。本投稿では、羽根車の複数枚ある羽根のうちの一枚が欠損している場合について、述べることとする。

図1の様に、単純に羽根が一枚だけ欠損した場合について、経験が無く、文献を見つけることもできなかった。
ある文献で、羽根枚数を2~12枚で実験したものの記載があった。ここでは、それを根拠とする。その文献は羽根が均等な間隔で配置されているため、本稿のトラブルとは若干の条件の違いがある。

現象:羽根車の羽根一枚を欠損
測定データ:吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=正常(多少変化する場合あり)

2.性能の考察
図2.性能曲線
羽根車の羽根一枚を欠損すると、液体を掻きだす羽根が少ないため、吐出し量が減少する。そのため、図2に示すように、性能曲線は吐出し量が減る方向へ移動する。
羽根車の直径は変わらない(残った羽根)ので、遠心力は低下することはない。そのため、圧力が高くなるのに少し時間を要するが、ほぼ同じ締切り揚程を得ることができる。

その結果、図2に記すように性能曲線は吐出し量が多いほど揚程が低下した(実際は吐出し量が減少した)、急な下がりこう配な曲線となる。
抵抗曲線はあまり変化しないので、運転点がAからBへ移り、全揚程はH1からH2へと小さくなり、その結果、吐出し圧力が低くなる。また、吐出し量はQ1からQ2へと減少する。
この傾向は、「吸込み配管が閉塞」と全く同じである。

3.その他の測定データ
羽根車の羽根一枚を欠損した場合の、その他の測定データは下記となる。

・吸込み圧力:変化無し、または微増
・電流値:場合による→6.アドバイス(1)参照
・振動値:大(アンバランス)
・異音:変化無し、または微増
・液体の流れ方:脈動あり

4.発生原因(例)
・腐食
・異物の噛み込み(衝突)
・羽根車の鋳物に巣があった

5.類似の現象との区別
吸込み配管が閉塞」は、羽根車の羽根一枚を欠損と似た測定データで、吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=変化無し となる。違いは、吸込み圧力と振動値である。
表1.吸込み圧力と振動値

6.アドバイス
図3.羽根枚数と効率
①羽根の枚数が減った場合の電流値について述べておこう。
羽根が少ないと羽根と羽根の間隔が広くなり、流体の剥離が生じて効率が低下する。
逆に羽根が多いと羽根と羽根の間隔が狭くなり、摩擦損失が大きいため効率が低下する。
その結果、いづれも電流値が上昇する可能性がある。羽根の枚数は、この中間のベストな枚数になるように設計される。
羽根が一枚だけ欠損した場合、剥離が生じて効率が低下するが、吐出量も低下するので、電流値は大きくなるのか小さくなるのかは、場合により異なり、一概には言えない。

写真1. プレス製羽根車
②羽根車が鋳造品の場合、羽根が一枚丸ごとモゲることは、ほとんど無い。しかし、写真1のように、鉄板の羽根をスポット溶接で固定しているような簡易なものの場合は、羽根一枚が丸ごとモゲる場合があ得る。
このような羽根の構造なども勘案しつつ、故障の原因を推測してゆきたい。
以上

2018年11月1日木曜日

吸込み側で空気が混入

1.概要
ポンプの運転中は、吸込みが押込み圧である場合を除いて、吸込み配管から、羽根車の入口に至るまで、負圧(大気圧より低圧)となる。そのため、シールやパッキンの状態が悪いと、そこから空気を吸いこんでポンプの運転に悪影響を与える。

現象:吸込み側で空気が混入
測定データ:吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=正常(例外あり)

2.性能の考察
吸込み側から空気を吸いこむと、ポンプが搬送する流体のうち一部分を空気が占めてしまうため、液体の流量(=吐出し量)は減少してしまう。
これは、吸込み配管が閉塞してキャビテーションが生じて吐出し量が減少するのと似た現象であり、同じような性能的な変化が発生する。以前に記事に上げた「吸込み配管の閉塞」を参照して頂きたい。ここでは同じ説明を省略する。

3.その他の測定データ
吸込み側で空気が混入した場合の、その他の測定データは下記となる。

・吸込み圧力:大気圧(0MPa)に近くなる
・電流値:小
・振動値:大 ・・・回転周波数とは無関係な振動
・異音:やや大 ・・・気泡を攪拌する音

4.発生原因(例)
・吸込み配管に穴が開き大気開放となっている
・吸込み配管中のパッキンが不良
・グランドパッキン、メカニカルシールの破損
・グランド部への注水(シール水)配管の閉塞
・吸込み側タンクの水位が低い(渦から空気を巻き込む)
・吸込み側タンク内で、吸込み配管の取り込み口付近に落水があり、気泡を吸込んでいる

5.類似の現象との区別
吸込み配管の閉塞」は、吸込み側で空気が混入と似た測定データで、吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=変化無し となる。違いは吸込み圧力である。吸込み側で空気が混入の場合、吸込み圧力が大気圧に近づく(上昇)のに対し、「吸込み配管の閉塞」は吸込み圧力が大きく低下する。
表1. 吸込み圧力の違い

6.アドバイス
①本項で述べている空気の問題は、運転中に吸込み側から空気を吸い込んだ際のトラブルについて述べている。ポンプの起動時や立ち上げ時に、呼び水等を充分にせずに発生する揚水不良の状態とは現象や対策が異なるので、注意して頂きたい。そちらについては、いづれ投稿したい。

②吸込み圧力計が無い場合、測定データだけで「吸込み配管の閉塞」との違いを判断するのは困難である。まわりの状態や設置状況を見て判断しよう。例えば下記の点をチェックして判断する。
・吸込みタンクの水位・・・低い場合 →「吸込み配管の閉塞」
・吸込み配管の周辺の床が濡れている →「吸込み側で空気が混入」
・その他
このような判断ができると、フィールドプレイヤーとしてワンランクアップだぁ!
以上

2018年10月26日金曜日

羽根車内の流路が閉塞

図1.羽根の流路が閉塞
1.概要
ほとんどのポンプで最も流路が狭くなる部分は、羽根車の入口部分である(図1参照)。ストレーナやスクリーンが無い場合、液体中の異物が詰まりやすいのは、この部分である。
本投稿では、羽根車内の流路の一つが閉塞した場合に、どのようなトラブルが生じるのか述べる。

現象:羽根車内の流路の一つが閉塞
測定データ:吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=正常



2.性能の考察
図2.性能曲線
羽根車内の流路が閉塞すると、例えば5枚羽根であった場合、流路の1/5が失われるので、その分だけ吐出し量が減少する。その結果、図2に示すように、性能曲線は吐出し量が減る方向へ移動する。
羽根車の直径は変わらないので、遠心力は低下することはない。そのため、圧力が高くなるのに少し時間を要するが、同じ締切り揚程を得ることができる。

その結果、図2に記すように性能曲線は吐出し量が多いほど揚程が低下した(実際は吐出し量が減少した)、急な下がりこう配な曲線となる。

抵抗曲線はあまり変化しないので、運転点がAからBへ移り、全揚程はH1からH2へと小さくなり、その結果、吐出し圧力が低くなる。また、吐出し量はQ1からQ2へと減少する。

この傾向は、「吸込み配管が閉塞」と全く同じである。

3.その他の測定データ
羽根車内の流路が閉塞した場合の、その他の測定データは下記となる。

・吸込み圧力:変化無し、または微増
・電流値:小
・振動値:大(アンバランス)
・異音:変化無し、または微増
・液体の流れ方:脈動あり

4.発生原因(例)
・流体中に異物混入
・吸込みストレーナの破損

5.類似の現象との区別
吸込み配管が閉塞」は、羽根車内の流路が閉塞した場合と似た測定データで、吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=変化無し となる。違いは、吸込み圧力である。
また、いづれも振動が発生するが、振動原因が異なる。振動の周波数解析でいづれか確認しよう。
表1.吸込み圧力と振動値
以上

2018年10月23日火曜日

回転速度が低下

1.概要
現象:回転速度が低い
測定データ:吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=低

ポンプの回転速度が遅くなると、吐出し量、吐出し圧力ともに低下する。遠心ポンプは遠心力で液体を搬送する機械なので、それをイメージするのは容易であろう。

2.性能の考察
図1.性能曲線
回転速度が低下すると、性能曲線は吐出し量がゼロから最大に至るまで全吐出し量で全揚程が低下する(図1参照)。
抵抗曲線はあまり変化しないので、運転点がAからBへ移り、全揚程はH1からH2へと小さくなり、その結果、吐出し圧力が低くなる。また、吐出し量はQ1からQ2へと減少する。
この傾向は、「ライナリングの摩耗」と全く同じである。

3.その他の測定データ
回転速度が低下した場合の、その他の測定データは下記となる。

・吸込み圧力:変化無し、または微増
・電流値:小
・振動値:変化無し
・異音:変化無し
・回転速度:低・・・【重要】

4.発生原因(例)
・インバーターの出力周波数が小さい
・60Hz地区のポンプ(電動機)を50Hz地区で使用
・マグネットポンプの磁力低下・・・すべり大となる
・プーリー径の間違い
・ベルトの滑り

5.類似の現象との区別
ライナリングの摩耗」の場合、回転速度が低下と似た測定データで、吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=低 となる。
明白な違いは電流値である。回転速度が低下の場合、遠心羽根では電流値が小となるが、「ライナリングの摩耗」の場合は電流値が大となる。
また、明らかに回転速度が異なる。回転速度計(タコメーター)があれば、回転速度も測定しよう。
表1.電流値・回転速度の違い

6.体験談
筆者はマグネットポンプの磁石が劣化して回転速度が低下したトラブルを体験したことがある。
接液部のマグネットを包む樹脂部分に傷が生じ、その傷穴から、硫酸か次亜塩素酸ソーダか忘れたが、液体が浸入して磁石を劣化させたのだ。
マグネットポンプは回転体を外から見ることが出来ない。そのため、回転速度の測定をすることが出来ずに、なかなか原因の断定が出来なかった。
分解してみると、磁力が明らかに低下しているのが分かり、それを確信することができた。

7. 修正履歴
2018-10-24:表1の電流値について誤記訂正
以上

2018年10月20日土曜日

ライナリング(ウェアリング)の摩耗

1.概要
現象:ライナリング(ウェアリング)が摩耗
測定データ:吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=低

図1.ライナリング周辺
の構造
ライナリングやウェアリング(以下、ライナリングという)は、図1に示すように、遠心ポンプの羽根車(回転部)とケーシング(固定部)の隙間(クリアランス)を狭くすることで、羽根の出口側で高圧になった液体が、低圧部分に漏れるのを抑制する部品である。

この隙間が摩耗や腐食で広がると、漏れ量が多くなり、ポンプの性能が低下する。羽根車が仕事をしても、隙間からどんどん液体が漏れてゆくのだから、圧力も下がり、吐出し量も減少してしまう。それは、素人でも何となくイメージできるだろう。

2.性能の考察
図2.性能曲線
ライナリングが摩耗すると、性能曲線は吐出し量がゼロから最大に至るまで全吐出し量で全揚程が低下する(図2参照)。
抵抗曲線はあまり変化しないので、運転点がAからBへ移り、全揚程はH1からH2へと小さくなり、その結果、吐出し圧力が低くなる。また、吐出し量はQ1からQ2へと減少する。
この傾向は、「回転速度が低下」と全く同じである。

3.その他の測定データ
ライナリングが摩耗した場合の、その他の測定データは下記となる。

・吸込み圧力:変化無し、または微増
電流値:遠心羽根の場合=大、斜流羽根=変化微妙 ・・・【重要】
・振動値:変化無し(隙間が過大となると回転体が振れて振動値=大の場合あり)
・異音:変化無し

ここで着目したいのは電流値である。
ライナリングが摩耗した場合、羽根車から出た液体は、ライナリングの広がった隙間を通過して吸込み口側へバイパスして循環しているのだが、これは吐出し配管が開放されて流れているのと、ほぼ同じ状態といえる。
吐出し配管から流れる液体は少ないが、羽根車自体は大変な仕事をしているのだ。そのため、遠心羽根の場合は電流値=大となる。

4.発生原因(例)
・液性の問題(砂などのスラリーの混入、毛髪等の絡み、腐食性の液体)
・軸受の損傷などによる、回転体の芯ずれ
・羽根のアンバランスや軸の曲がり等による、回転体の振れ回り
・ライナリングの不良品(設計または加工ミス)

5.類似の現象との区別
「羽根車が損傷」した場合は、ライナリングの摩耗と似た測定データで、吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=低となる。また、吸込み圧力も似た傾向となる。
明白な違いは電流値である。ライナリングが摩耗した場合、遠心羽根では電流値が大となるが、「羽根車が損傷」の場合は電流値が小となる。
表1.電流値の違い

回転速度が低下」の場合も、ライナリングの摩耗と似た測定データで、吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=低 となる。違いは、電流値である。
また、回転速度が異なる。回転速度計(タコメーター)があれば、回転速度も測定しよう。
表2.電流値・回転速度の違い

吸込み配管の閉塞」はライナリングの摩耗と似た測定データで、吐出し量=少、吐出し圧力=低 となる。違いは締切り圧力である。必ず締切り圧力を測定しよう。
表3. 締切り圧力の違い

6.アドバイス

①本項では「摩耗」と呼んでいるが、摩耗ではなくライナリングの「腐食」によってクリアランスが広がって、能力低下を起こしている可能性がある。
「摩耗」が原因の場合には、ライナリングの材質を耐摩耗性の高いものに変更したり、表面処理等を施したものに変更することで対応する。また、ライナリングの摺動部に外部から清浄な液体を圧入することで、摩耗を防止する方法もある。
「腐食」が原因の場合には、ステンレス鋼やエンプラなど耐食性の高い材料を採用する。

②クリアランスが狭いほど、高圧側から低圧側への漏れが少なくなり、ポンプの性能は向上する。しかし、狭い方が異物の噛み込みによる回転体のロックや焼き付きのリスクが高くなる。

③ライナリングの隙間の許容値は、「隙間が新品の3倍まで」や、「直径100mmあたり0.3mmまで」などと一般的に言われている様だ。
正確に知りたければポンプメーカーに問い合わせるしかない。私の個人的な意見としては、低下してゆく能力・安全を、ご自身が我慢できる限界まで使えば良いと思う。

7. 修正履歴
2018-10-24:電流値の変化について誤記訂正
以上

2018年10月18日木曜日

吸込み配管の閉塞

1.概要
現象:吸込み配管が閉塞
測定データ:吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=正常

吸込み配管が閉塞すると、吐出し量が減少するだけでなく、振動や異音、メカニカルシールの破損など、様々な異常が発生する。そのため、吐出し配管の閉塞よりも深刻な問題となる場合が多く、早急な発見と対策が要求される。

2.性能の考察
吸込み配管が閉塞すると、吸込み配管の閉塞部分から羽根車の入口の間の圧力が低下する。例えば、マクドナルドでシェイクをストロー吸っていて、ストロー入口が詰まるとストロー内の圧力が低下して舌や唇が吸い付かれることがあるが、それと同じ現象だ。

吸込み配管の閉塞が酷くなる程に羽根車の入口の圧力は低下してゆき、ついにはキャビテーション現象が発生する。キャビテーションによって発生した気泡が、流れる液体内に含まれることで、ポンプを通過する液体の占める割合が低下する。すなわち、それが液体の流量(=吐出し量)の低下である。

図1.性能曲線
気泡を含めた流体(=気体+液体)の吐出し量は、正常な性能曲線とほぼ同じである。しかし、気泡分を差し引いて液体だけにすると、図1に記すように性能曲線は吐出し量が多いほど揚程が低下し、急な下がりこう配な曲線となる。

抵抗曲線はあまり変化しないので、運転点がAからBへ移り、全揚程はH1からH2へと小さくなり、その結果、吐出し圧力が低くなる。また、吐出し量はQ1からQ2へと減少する。

3.その他の測定データ
吸込み配管が閉塞した場合の、その他の測定データは下記となる。

・吸込み圧力:大きく低下・・・【重要】
・電流値:小
・振動値:大 ・・・回転周波数とは無関係な振動
・異音:やや大 ・・・羽根車入口付近にて発生

4.発生原因(例)
・吸込み配管の内壁にスケールが付着
・吸込み配管の内部に異物が混入
・吸込みストレーナのメッシュ部が目詰まり
・吸込み配管のバルブが全開ではない(閉止、半開状態)
・吸込み配管の配管径が小さい(設計の誤り)・・・流速は1~3m/sが適正
・吸込み配管が長すぎる(設計の誤り)
・吸込み側タンクの水位が低い(ポンプ自吸能力の限界を超えている)
・吸込み配管のヘッダー管を共有している他ポンプと並列運転

5.類似の現象との区別
吸込み側で空気が混入」は、吸込み配管の閉塞と似た測定データで、吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=変化無し となる。違いは吸込み圧力である。吸込み配管の閉塞が明らかに吸込み圧力が低下するのに対し、「吸込み側で空気が混入」は吸込み圧力が大気圧に近づく。
表1. 吸込み圧力の違い

羽根車内の流路が閉塞」は、吸込み配管の閉塞と似た測定データで、吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=変化無し となる。違いは吸込み圧力である。
また、いづれも振動が発生するが、振動原因が異なる。振動の周波数解析でいづれか確認しよう。
表2. 吸込み圧力の違い
6.アドバイス
①吸込み側に圧力計が設けられている場合は少ないが、吸込み圧力が負圧であれば、吸込み配管が閉塞していると、ほぼ断定できる。
筆者は現場調査を実施する際には、常に連成計とその小配管を持参している。ポンプ吸込みノズルの周辺にネジ+プラグがあると、小躍りしたくなるほど嬉しい。

②羽根車入口付近の外側を聴診器等を使用して、音を聞いてみる。「サー」や「ザー」という音が聞こえたら、キャビテーションによる気泡の音だ。
その音を聞きながら、少しづつ吸込みバルブを絞っていってみよう。絞るにつれて、その音が徐々に激しくなってゆけば、それは間違いなくキャビテーションによる異音である。

7. 修正履歴
2018-10-20:図1の誤記訂正
2018-10-29:類似の現象の項目を変更
以上

2018年10月17日水曜日

吐出し配管の閉塞

1.概要
現象:吐出し配管が閉塞
測定データ:吐出し量=少、吐出し圧力=高、締切り圧力=正常

吐出し配管が閉塞すると、吐出し配管内を液体が流れにくくなり、吐出し量が減少するということは素人でも感覚的に分かる。蛇口につないだホースを踏んづけると、水道水がチョロチョロとしか出なくなるのと同じだ。

2.性能の考察
図1.性能曲線
吐出し配管が閉塞すると、吐出し配管内を液体が流れにくくなり(配管摩擦損失が大きくなり)、図1に記すように抵抗曲線が急な上昇こう配となる。すると、運転点がAからBへ移り、全揚程はH1からH2へと大きくなる。その結果、吐出し圧力が高くなる。
それに伴い、吐出し量はQ1からQ2へと減少する。

3.その他の測定データ
吐出し配管が閉塞した場合の、その他の測定データは下記となる。

・吸込み圧力:変化無し、または微増
・締切り圧力:変化無し
・電流値:遠心羽根の場合=小、斜流羽根=変化微妙、軸流羽根=大
・振動値:変化無し、または大
・ポンプ内液体温度:変化無し、または大(閉塞が酷い場合)

4.発生原因(例)
・吐出し配管の内壁にスケールが付着
・吐出し配管の内部に異物が混入
・吐出し配管のバルブが全開ではない(閉止、半開状態)
・逆止弁の動作不良(固着等が原因で全開にならない)
・吐出し配管の配管径が小さい(設計の誤り)
・吐出し配管が長すぎる(設計の誤り)
・吐出し配管のヘッダー管を共有している他ポンプと並列運転

5.アドバイス
吐出し配管の閉塞が酷い場合、ポンプ内液体温度が急上昇する。羽根車で圧縮された液体のエネルギーの逃げ場所が無く、それが熱エネルギーとなって液温を上昇させるのだ。
この傾向は、小容量で高揚程のポンプ(2極の電動機の場合など)で激しくなる。

6.体験談
「ポンプの吐出し量が減少したため、新しいポンプに更新したのだが、全く改善しなかった」と相談された事が何度かある。ある現場では、吐出し配管の内壁にスケールがびっしりと付着していた。井戸水を揚水するポンプで、地下水に含まれる鉄分が長い年月を経て吐出し配管の内壁に付着したのだ。
ポンプの吐出し量が減少した=ポンプが悪い!とは限らない。配管、電動機、電気設備、制御機器・・・あらゆる原因を想定しながら、測定データに基づいて、定量的に判断したい。
以上

2018年10月16日火曜日

はじめに

 遠心ポンプは、液体を運搬する機械であり、小さなマンションから巨大な工場に至るまで様々な所で使用される現代文明に不可欠な機械である。そんなポンプが故障すると困った事になる。それを解決する一助になればと思い、このブログを開設することにした。
 筆者は趣味で多忙なサラリーマン。ゆっくりと時間をかけて更新していくつもり。便利なスタイルを色々と試しながら完成させてゆくことにする。ある程度、記事が蓄積できた頃に、故障の症状から簡単に原因を特定できるようなシステムを構築してゆくつもり。