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図1.羽根一枚を欠損 |
図1の様に、単純に羽根が一枚だけ欠損した場合について、経験が無く、文献を見つけることもできなかった。
ある文献で、羽根枚数を2~12枚で実験したものの記載があった。ここでは、それを根拠とする。その文献は羽根が均等な間隔で配置されているため、本稿のトラブルとは若干の条件の違いがある。
現象:羽根車の羽根一枚を欠損
測定データ:吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=正常(多少変化する場合あり)
2.性能の考察
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図2.性能曲線 |
羽根車の直径は変わらない(残った羽根)ので、遠心力は低下することはない。そのため、圧力が高くなるのに少し時間を要するが、ほぼ同じ締切り揚程を得ることができる。
その結果、図2に記すように性能曲線は吐出し量が多いほど揚程が低下した(実際は吐出し量が減少した)、急な下がりこう配な曲線となる。
抵抗曲線はあまり変化しないので、運転点がAからBへ移り、全揚程はH1からH2へと小さくなり、その結果、吐出し圧力が低くなる。また、吐出し量はQ1からQ2へと減少する。
この傾向は、「吸込み配管が閉塞」と全く同じである。
3.その他の測定データ
羽根車の羽根一枚を欠損した場合の、その他の測定データは下記となる。
・吸込み圧力:変化無し、または微増
・電流値:場合による→6.アドバイス(1)参照
・振動値:大(アンバランス)
・異音:変化無し、または微増
・液体の流れ方:脈動あり
4.発生原因(例)
・腐食
・異物の噛み込み(衝突)
・羽根車の鋳物に巣があった
5.類似の現象との区別
「吸込み配管が閉塞」は、羽根車の羽根一枚を欠損と似た測定データで、吐出し量=少、吐出し圧力=低、締切り圧力=変化無し となる。違いは、吸込み圧力と振動値である。
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表1.吸込み圧力と振動値 |
6.アドバイス
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図3.羽根枚数と効率 |
羽根が少ないと羽根と羽根の間隔が広くなり、流体の剥離が生じて効率が低下する。
逆に羽根が多いと羽根と羽根の間隔が狭くなり、摩擦損失が大きいため効率が低下する。
その結果、いづれも電流値が上昇する可能性がある。羽根の枚数は、この中間のベストな枚数になるように設計される。
羽根が一枚だけ欠損した場合、剥離が生じて効率が低下するが、吐出量も低下するので、電流値は大きくなるのか小さくなるのかは、場合により異なり、一概には言えない。
写真1. プレス製羽根車 |
このような羽根の構造なども勘案しつつ、故障の原因を推測してゆきたい。
以上